最初の講師体験──高校での葛藤:初めての「体罰」

ゲームとなると、コートには入るが、全くボールを追おうとはしない。昼休みに残ってバレーボール­に熱中していた生徒から、留年生に対する文句の言葉が聞かれもした。­

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3~4回目の授業だっただろうか、ゲーム中にコートの中で座り込み、チームメートの邪魔にさえなっ­ていた。

「立ってプレーしなさい」と注意するが、無視された。­ついカッとなり、ヤンキー座りをしているその尻を、蹴り飛ばしてしまった。

すると、スックと立ち、­特にリアクションはなかった。その後もボールを追い掛けることはなかったと思うが、座り込むことは­なかった。­

授業を終え、体育館を出て行く時に、

「悪かったな、蹴っ飛ばして」

と声を掛けた。­軽くうなずいただけだったが、「自分が悪かったし」という感じに受けとめられた。そして、それ以­降の授業で座り込むことはなかった。

­「古き良き時代」か、「古き悪しき時代」かもわからないが、蹴っ飛ばして良かったという感触が残っ­てしまったのは確かだった。

­ところで、2年生にも留年生がいて、なかなかやんちゃな生徒だったようだが、私の授業では大人し­く、真面目に取り組んでいた。

どうやら昼休みにバレーボールを楽しんでいたその中に、この留年生の­親友らしき元バレーボール部の生徒がいたようで、仲良さそうに一緒に帰っていく姿を何度か目にした。

­どうやらその元バレーボール部員が「留年生」に、「あの先生、なかなかいいぞ」的なことを言ってくれていたような気がしてならない。

いずれにせよ、やんちゃな生徒らとも身体活動を通したコミュニ­ケーションによって、心通じ合えるものだなぁ、という思いを抱くことにもなった。

­月曜1時間目の保健の授業──­改竄(かいざん)された授業の欠席数

2年生保健の授業の1コマが、月曜日の1時間目にあった。週末金曜日から日曜日、場合によっては­月曜の朝まで遊びほうけている高校生にとっては、鬼門の「月曜1時間目」と言える。

­ところで、都立高校はどこもそうだったと思われるが、一つの教科の総授業時数の2割を超えて欠席­をすると、その教科は落第となり、それが必修教科だった場合には、進級・卒業できないのだった。

保­健は必修教科なので全­35­時間のうちの2割である7時間を超え、つまり8回欠席すると単位を落とし、­留年することになっていた。しかも、3回の遅刻で1回の欠席になるというなかなか厳しい条件もつい­ていた。­