この頃も鬱病に関する書籍を読み漁った。

どの本も「鬱病は必ず治る」と書いてあったのでその言葉にすがる思いであった。本の中にはそれ以外、「励ましてはいけない」、「頑張って」とか、「早く良くなって」とかの言葉は、絶対かけてはいけないという。

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そんな注意事項を頭にたたき込んで妻と接するようにした。

すべて受け入れることにした。

妻も最低限の生活は何とかできている。

我慢だ、忍耐だ。絶対治るという言葉を信じて頑張った。

妻に復調の兆しが見え始めたのは、病気を診断されてから約六ヶ月後からだった。

それまでは食べて薬を飲み、眠る。その繰り返しであった。

妻は「早く春にならないかな」と繰り返し言うようになっていた。診断されたのが六月頃なので十二月頃だ。春には何があるのだか分からないが何か病気が治っていく兆しのように感じた。それから少し経ち、ジグソーパズルをやりたいと言い出した。それほど大きくない、ミッキーマウスのジグソーパズルに没頭しだした。二、三日で完成したような気がする。次、一メートル四方はあるだろうか、花柄のジグソーパズルに挑戦した。これは簡単には終わらない。驚くべき集中力で二ヶ月位掛けて完成させた。その頃はもう三月で、陽も少しずつ長くなっている。

妻の様子も大分良くなってきた。能面のような顔から少しは表情が戻ってきた。簡単ではあるが化粧もするようになっていた。

私は妻に外で働くことをアドバイスした。子供達が学校に行っている間でもどうかと。

近所付き合いがうまくないので、話す人もいなく感情を発散させる場がない。パートで少しでも外の空気に当たれば、気が晴れるだろうという考えだ。

その考えは見事に的中し、鬱病から脱却したのだ。