早速サンプルを試食してもらうと…

彼の目の色がたちまち変わった。

「こんなに美味いとは知らなかった、全店導入しよう」。

私は心の中で万歳三唱していた。

興味を示していたフリーズドライ製法の知識が、みそ汁の開発に役立ったのである。

わらべやブランドのカップみそ汁を急いで製造しなければならない。

しかし、製造するための機械も原料も設備も当社にはない。受注したけれど工場がないので製品が出来ないなんて、いま考えれば非常に情けない話である。自社で製造するには「人」「場所」「機械設備」「ノウハウ」が必要で、それには少なくても半年は要する。

やむを得ず、フリーズドライの粉末味噌(生の越後味噌をフリーズドライにしてくれる会社に供給して粉末にしたもの)とフリーズドライの野菜の具、包装資材を各会社から買付けて、それらを下請け会社に供給し、一食ずつ包装してもらった。一万食分を当社の倉庫に入れて、パートを雇ってカップに詰めて何とか間に合わせたのである。