ダメだ。うまくコンサルト(端的な説明)ができない。初期対応はうまくできたつもりだったが、人に説明するのは難しい。
「CTは?」
「CTでも虫垂が腫れていて、中に糞石もあります」
「それなら虫垂炎だね」
「はい」
田所先生の誘導のおかげで、何とか虫垂炎であることにたどり着く。
「ちなみに主訴は何?」
「右下腹部痛です」
「手術歴は?」
「えっと」
「内服薬は?」
「えっと」
「家族はすぐに来れそう?」
「……」
「今言ったこと、すぐに確認しておいて」
「はい、すいません」
急いで確認し、再度田所先生に伝える。
「既往歴や手術歴、内服薬はありません。ご主人が今病院に向かっているそうです」
「分かった。じゃあ、麻酔科と手術室に連絡して手術の準備を始めようか」
「はい、よろしくお願いします」
手術の準備を整えている間に患者さんのご主人が来院した。
「術前のICはしたことある?」
「いえ、ないです」
「せっかく最初から診ているし、やってみようか」
「はい」
今までいろいろな先生のICに同席させてもらっており、要領はなんとなく分かっているので大丈夫なはずだ。
「外科の山川といいます。よろしくお願いします」
患者さん本人と、先ほど病院に到着したばかりのご主人を個室に誘導し、ICを始める。田所先生が後ろで待機している。何かあればすぐにフォローしてもらえる状況なので安心感があった。
「腹痛の原因は虫垂炎によるものだと思います。血液検査で炎症の値が上昇していて、CTでも虫垂が腫れていることが分かります」
電子カルテで血液検査の結果やCT画像を見せながら説明する。