「それがあなたのプライドなのよ」
悦子は首をすくめた。
「でも、プライドなんてつまらないものだと思えるようにならなければ、あなたは大きくなれないわよ。いい、よく聞きなさい。風間さんにはいつか言ってあげようと思っていたの」
悦子は諭すように言った。
「女は誰でも、自分をヒロインにしてくれる人を待っているの。風間さんは香奈ちゃんの事を主役にしてあげた? どう、してないでしょ。香奈ちゃんを主役にしないで、あなた一人でうじうじと悩んでいる。それがあなたのいけないところよ」
予想外の視点から切り込んでこられたので、風間はぐっと詰まってしまった。なるほどそういうものの見方もあるかもしれない。 悦子は、風間の姉でもあるかのように、ずばずばとものを言った。だが、風間にはこのような直言はむしろ心地よい。親身な人には素直になれるものだ。
だが、少しばかり反発を感じないものでもない。風間は冗談に紛らすことにした。
「すると、村上君はあなたをヒロインにしたんですか?」
風間は笑いながらはぐらかした。
「あなたを教育するのは本当に難しそうね」
悦子も苦笑しながら腰を浮かせた。そのとき村上が入ってきたからである。
「何の密談だ?」
村上は真面目な顔で二人を見くらべた。