そうして3年生の春、音楽バンドを組んで生徒総会で発表しようと準備を進めた。この学校の生徒総会は、そんな場でもあった。私はエレキギターを担当し、ベースにドラムにキーボード、そして、ボーカルと、いわゆる「ロックバンド」を結成した。と言っても、そこまでのロックではなく、サザンオールスターズの曲などをやることになった。
ところが、普通に生徒総会の場でできるものと思って練習を進めていたが、「職員会議において、エレキギターはダメだということになった」と告げられる。「理由は?」と聞くと、「隣近所への騒音」ということだった。「音量を下げれば大丈夫です!」と食い下がるが、受け入れられない。
すると、それを聞きつけた生活委員会委員長が、体育館近辺の家を一軒一軒訪問し、「バンド演奏を体育館でやりたいので、その時間の騒音を許していただけませんか?」と聞いて回ってくれたのだ。全戸からの許しを得て、中には「そういうのいいですね。大いにやってください」と励まされた家もあったとのことだった。
これで生徒総会でやれる、と思った矢先、学級担任から「職員会議で、『やはりバンド演奏はダメだ』との結論が出た」と告げられた。生活委員会委員長の話を出して食い下がるが、軍人上がりの老齢の担任教師は、「私はね、もう年もいって、頭が固くなっているんですよ」と髪のない頭をなでながら、これ以上話を続けても無理だと諦めるように促される。
悔しさのあまり、もう泣くしかなかった。おそらくエレキギターを始め、「ロックバンド」などというものは「非行のはしり」、不良のやるものだという認識が強くあり、その予防のために許可が下りなかった、としか考えられず、憤りを感じずにはいられなかった。