「邂逅」10歳から11歳:運命の出会い 5
翼の家の最寄り駅のすぐ近くに、ひなびた喫茶店がある。そこで、剛が一条家の人たちを待っている。コーヒーがすでに届いていて湯気も上がっているが、全く口をつけていない。
そこに翼、三枝子と勝が入ってくる。四ノ宮は立ち上がる。
「四ノ宮剛と申します。本日はありがとうございます」
と一礼する。
「一条勝と申します」
席に着く4人。勝の表情は硬い。
「早速ですが、翼さんのコーチをやらせてもらえませんか?」
「三枝子から話は聞きました。でも選手はいくらでもいるのではないですか? 翼は好きで滑っているだけですし、誰かに教わったことも一度もありません」
「だから凄いのです。見よう見まねで、あんなジャンプを跳ぶなんてできないですよ。ちゃんと教えたら一流選手に必ずなれます」