藤原銀次郎
欧米ではロックフェラーやモルガンなど大富豪が寄付をするというのはよく聞きますが、日本でも素晴らしい大富豪がいました。私の母校でもある慶應義塾大学の理工学部は藤原銀次郎氏から寄贈された学部なのです。
長野県出身の彼は慶應義塾大学を出た後、地方の新聞社を経て三井銀行に入社しました。27歳の若さで富岡製糸場の支配人となり、その後、経営難の王子製紙を再建し、後に「製紙王」と呼ばれるようになりました。
彼は「仕事の報酬は仕事である」と著書に書いています。彼は報酬とはお金でもなく地位でもなく、優れた仕事をやりぬくと、さらにやりがいのある仕事が与えられるということを言っています。まさに藤原銀次郎にとって事業が天性のライフワークだったのだと思います。それゆえに次から次と良い仕事が回ってきたのでしょう。ぜひ読者の皆さんもより良いライフワークを見つけ出しましょう。
私は京都の妙心寺で禅修行をしたことがありますが、前夜遅くまで座禅を組み、早朝5時には、たたき起こされます。その後、天井画に狩野探幽の「登り龍、下り龍」の見事な絵が描かれている「法堂」の拭き掃除から始まり、妙心寺を囲んでいるお濠のドブ掃除もさせられました。
それから修行生全員で自分たちの朝食の準備をします。おかゆと漬物だけでしたが本当に美味しくいただけました。そのときおかゆの数粒をお盆の片隅に取り分けます。わずかしかないおかゆから鳥の餌として数粒をお裾分けしましょうという意味が込められていました。「全てを独り占めするものではない!」と言う、先人の成功された人には、この様な哲学があるように思います。
お金には儲け方にも、使い方にも「品性」のようなものが必要ではないでしょうか。