近隣で恐れられる「ならず者」集落に向かうキャラバン隊一行
最後の日、いよいよ最後の集落に向かうことになった。近隣で恐れられる「ならず者」集落である。キャラバン隊はその集落が存在する東の山奥に分け入った。
道らしい道は無く、草の海を掻き分けて進む。ユヒトはたびたび立ち止まって太陽の位置と近くの山の形を見比べた。
「あそこだ」
ユヒトの指差す先――おびただしい木の幹の向こうに、藁葺住居の一部が見えた。キャラバン隊は少しずつ近づいて行った。
突然、頭上から、おおおう、と唸り声がした。振り仰ぎ見ると木の幹に黒い人影が点々と浮かんでいる。唸り声にあわせて、向こうの集落で動きが見えた。人影が寄り集まり、こちらに向かってくる。総勢十名ほど、全員男性だ。半裸で、隆々とした筋肉を動かして近づいてくる。