「外科医も10年目くらいまでは若手扱いだから」
「確かにこの立場は大変だけど、怒られたのは僕が悪かったからだと思ってる。反省してまた切り替えていくしかないんだけどね」
「山川は真面目だな。おれだったらそんなことがあったらいろんな人に話を聞いてもらうけどな。そして今頃知り合いみんなにこの話は広まっていると思う」
僕は軽く笑いながら肉を頬張った。
(僕が誰にも相談しないのは真面目だからなのかな)
答えは分からない。でも、多分違う。単に人に話を聞いてもらうということが苦手なだけのようにも思うし、それ以外に理由があるような気もする。ただ、早坂に話を聞いてもらえてスッキリしたのは事実だった。
「この店、美味しかったな」
「そうだね。やっぱりネットの意見は正しいね」
「今日はわざわざ実家から来てくれてありがとうな」
「うん。また定期的に行こう」
「おう。夏休み満喫しろよ」
「そっちこそご両親への挨拶頑張ってね」
こうして僕たちはそれぞれの帰路についた。早坂と話せてだいぶ気が楽になった。夏休み明けが不安だったが、少し勇気が出た。
「ただいま」
「おう、おかえり」
家に帰るとテレビを観ていた父が出迎えてくれた。僕は実家での定位置である食卓の父の向かいの席に座った。
「おかえり。何か飲む?」
母も台所から出てきて出迎えてくれた。
「僕はコーヒーを頼むよ」
「僕もコーヒーで」
「2人ともアイスでいい?」
「うん」
「ああ」