「じゃあこれからじっくり探してみます」
「見つかるよう祈ってるよ」
「ありがとうございます。お疲れ様でした」
「お疲れ」
岳也と洋一はほぼ同時に背を向けた。暗い帰り道を洋一は歩き始める。こんな所にルービックキューブを落としたはずはないと思いながらも、一応道端にも目を配る。もしかすると誰かに拾われてしまったのかもしれない。コンビニにも寄って、店員に落とし物はなかったかと訊いたが、ないと言われた。
新しいものを買えばいいじゃないか、と人は言うだろう。なにもその一つに固執することないじゃないか、と。だが、あのルービックキューブは特別なのだ。この世にたった一つしかないルービックキューブであり、簡単に取り換えがきくものではない。だから、なんとしてでも見つけなければいけないのだ。