第8話 菊池涼子一等技術兵の希望
薄暗い基地の一室では、眼にクマをこしらえながらも日の丸の鉢巻をして懸命に修理作業をするアツシがいた。
「……すごいです、鈴木二等兵。こんな時代に、こんな人間がいるなんて……」
TENCHIが赤い目を点滅させながら喋っている。
「アツシお前、何日も寝てないだろ、もう、変わろう」
いつの間にかシマと涼子が部屋に入っていた。
「ふあーっ、さすがに、もう限界です」
アツシの瞼は何日もの徹夜で腫れあがっていた。
「あっ、そうだ。アツシ、聞きそびれていたな。アメリカ軍の大変な情報を解読したって……」
シマはTENCHIを気にしアツシの耳元で呟く。
「すいません。忙しくて、忙しくて、上等兵にはまだ言ってませんでしたね」
アツシは隣の部屋にシマを誘導する。
「何かアメリカ軍が新型の特殊爆弾を開発して、近々空爆で使うかと。どこに落とすかはまだ分かりませんが、放射能を出し、すごい破壊力のある爆弾だと」
アツシは小声で話す。
「なに……海軍本部には言ったのか」
シマも小声で唸った。
「一応報告しました。頭の硬い上層部のお偉方には全然信じてもらえませんでしたが。まだまだ、竹やりでB29を撃ち落とせの世界ですからね。アメリカが恐ろしい大量破壊兵器を開発したのが受け入れられないのでしょう、我々も……」
「我々も……負けずに開発しないとか……科学はそんなもののために使うものではない……人類を豊かにし、進歩させるために使うものだ」
「本来は生き物、そしてこの地球の発展ために使うもんですね……ふぁぁ……それより、すみません、ひとまず寝ます」
そう言い終わるとふらつきながら床に倒れこんだ。