グリマルディは、突然恥ずかしい表情を見せた。

「残念なことに、できません、お嬢様。ジェノヴァはまだ新時代に遅れています。電気自動車のような発明品をその街ではほとんど見ることができません」
「ええ? ジョルダーニ様、でもとても簡単ですよ。この私だって運転できます」
「本当ですか?」

そのイタリア人は、驚きを隠さずに尋ねた。「本当です」と、アンカは追認し、すばやく頷いた後で食器を脇に置く。

「さらに申し上げたいのですが、テスラカーの運転の仕方を、短時間であなたに教えてあげることができると思いますよ」

グリマルディは、自分のふたつの掌の間にアンカの掌をはさみ、今朝のしぐさを繰り返して、彼女の眼を見つめる。

「クロムバヘルお嬢様、それは最高に素晴らしいことです」

プロクパツのワインを半リットルほど飲むのを最後に、二人はディナーを終えた。そして、静かなワルツの演奏に送られてダイニングルームから出た。