薬剤師・国際中医学専門員の佐田義尚氏が、「慢性的なかゆみの精神への影響」そして対処法についてわかりやすく解説していきます。

慢性的なかゆみの精神への影響

また人は夢を見て、上に向かって進んでいこうとするものです。それのために努力もします。私もそうでした。

しかし再発を繰り返していた時、大学病院の医師から「試験なんか受けたらアトピー性皮膚炎が出るぞ!」と冗談半分に言われたことを思い出します。もちろん大学では試験が何度もあります。

そのたびごとに悪くなると、“もう自分は何もできないんじゃないか”という悲観的な感情が湧き起こり、以前の楽天的とも言えるほどの自信も次第になくなっていきました。その感情は今でも常に首をもたげ、何か物事をする時に、済んでしまえば大したことではないのに、ことさら慎重に構えてしまうのです。

こういった性格の変化が、アトピー性皮膚炎が治った今でもストレスになり続けています。私の中では、アトピー性皮膚炎は“中途半端な”病気だという思いがあります。それはかゆみの持つ性質からくるものではないかと考えています。アトピー性皮膚炎で死ぬことは皆無であるにもかかわらず、その症状は精神的、肉体的に非常につらいものです。