たとえば、パワハラをする上司がいて、その部下がストレスを感じるのであれば、〔パワハラする上司―される部下〕という、パワハラをめぐるひとつの関係性の上での共通項があります。たとえ上司が認めなくても戦いようがあります。相互作用のポイントは同じだからです。
ところが、発達障害の傾向がある人と周りの人では、等価となる共通の問題がありません。周りの人がストレスを感じる場合は発達障害の傾向があるその人にストレスを感じますが、発達障害の傾向がある人は、悪意はないし自分の論理を言っているだけなので、ストレスを感じられても、ストレスを与えているという認識も事実もありません。故意にしている行為ではなく、その人の特性そのものだからです。
なので、周りの人が「つらい」と言っても、そのようなことが起こり得るとわかっている人以外にはわかってもらえない、上司に訴えても「君の気持ちの持ちよう、考え方だよ」と言われる可能性も高いのです。一人相撲のようになり、より深く傷つき、場合によっては恨みや、自分を人として見てもらえていない無力感や、カサンドラ症候群にも似た状態になることがあります。