炎天下にブランコを漕いでいると…
腹は空きすぎたからかもはや腹は空いていない。水一杯飲んでいないのに。私はボーっとしてブランコを揺らしている。
するとその時、頭がやたら大きな子供が目の前にあった。目と目の間がヒラメのように離れ、鼻は平たく、足にはちょっと大きめな靴。紛れもない私の息子のショーだ。
ショーはじっと私の目を見ていった。
「お父さんなにしているの。早くブランコを漕いでよ」
甲高い声で言った。
「え!」
私は自分の耳を疑った。
「何、ショー。もう一度言って!」
「ブランコ早く漕いでよー」
ショーが話した、ショーが話したと、何度も心の中で叫びながら、
「わかったショー。今、漕いでやるから早く座れ」
と言うや、私は有頂天になりブランコを漕ぎだした。
空はどこまでも青く高い。
俺はどんどん漕いだ。
「楽しいか、ショー」
ショーは嬉しそうに、ニコニコしながら手を振っている。私はブランコが高く大きく揺れていることも忘れどんどん漕いだ。
そんな時、妻の大きな声が聞こえてきた。その瞬間私は妄想から醒めた。朝早くからお昼頃まで帰ってこないので、心配して妻が探しに来てくれたのだ。
妻はショーに向かって「今から食事に行くよ」と断固として言うと不思議にショーは黙ってブランコからおりて妻についていってしまった。
炎天下の公園に一人残された私は抜けるような青空の中、独りポツネンと佇んでいた。