俳句・短歌 短歌 医師 2021.01.09 短歌集「花の影」より三首 歌集 花の影 【第10回】 松森 邦昭 医師として、多くの命と向き合ってきた著者が綴る、日常、仕事、家族のこと――。 本書では、著者が趣味で書き溜めた短歌を一冊にまとめた。 季節の歌や旅の歌に加え、本業である医者としての日常や患者との出会いなどに関する歌も収められている。 温かな生命が宿る短歌を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 秋あらしたけて狂いてブナの木の黄葉散らして秋を消しさる *妙高高原 嵐さり天まで抜けし青空に初雪かむり白馬つらなる 木曽川の闇ふかまりし鵜は見えず篝火浮かびゆるりと動く *犬山・木曽川
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『星空の下で』 【第16回】 つむぐ 亡き父は「市民全員の幸福」を切望していた。今の市政を見たらどう思うだろう…。 アパートの部屋に戻ると、さっとシャワーを浴びてベッドに向かった。三十代に入ってからは、疲れがなかなか抜けない。肩こりに眼精疲労。まとまった休みが取れないため、部屋にマッサージチェアまで導入したが、洗濯物置き場と化していた。私は横になると、泥のように眠った。今日は一日、休みをもらえたので、とことん眠るつもりだ。しかし、五時間ぐらいで、着信音に起こされた。携帯電話の画面を見ると、母の顔写真。「何、ど…