「僕が十月のあと、今日まで会わなかった理由を聞かないんだね」
「しょうがないもの…」と私はすねたような顔で言った。
「君のそういうところが好きだよ」
「今日、プレゼントを持って来たの」と私はきりだした。
「なんだい? サプライズだね!」
「これ、あけてみて」と私は緑色の包みを渡した。神矢は赤いリボンをほどき、緑の包装
紙をあけた。紺色のマフラーが出てきた。
「マフラーかい?」
「そう。私が編んだの」
「君が?」と神矢は驚いていた。
「ありがとう」と言うや、彼は自分の首に巻いて見せた。
「あったかいよ。本当にありがとう」
「良かった。気に入ってもらえるか心配だったの」
「気に入るも何も、うれしいよ。君が僕のために手編みしてくれたなんて、うれしすぎる
よ。大事に使うよ。ほんとにありがとう」と神矢はまた礼を言った。
「じゃぁ、私、帰るわ」
「あぁ。気をつけて」
ふと、私は正月を神矢と過ごしたいと思った。
「お正月はどうしてるの?」
「一人だし、別に何もないよ」
「来ちゃぁ、ダメ?」
「君さえ良ければ、僕はいいよ」
「元日でもいい?」
「いいよ」
神矢はあっさりOKをくれた。私はうれしかった。
「良かった。ありがとう。じゃぁ、良いお年を」と言って、私は部屋を出た。
暮れに買い出しをして、大晦日に、私は神矢に食べてもらいたくて、おせち料理をせっせと作った。重箱の上の段に、海老や数の子、紅白のかまぼこ、黒豆などを綺麗に入れて、下の段に、蓮根や竹の子、こんにゃく、お芋、高野豆腐などの煮物を入れて出来上がった。
元日の昼前に、おせちの重箱を風呂敷に包んで持ち、私は神矢を訪ねた。