ある棚には大小の置き時計が秒針まで合わされ、正確に時間を刻んでいる。よほど丁寧に手入れがされているのだろう、木目のある時計はピカピカに磨かれている。金色の女神の彫刻が掲げる時計は、長い尾のような振り子を揺らしている。

ある時計には、幾つもの針で天候や月の満ち欠けを表す細密な絵が施されていた。梁の上には柱時計が五個ほどあり、低い音でカチコチと不思議な和音で時を刻んでいる。それらはまるでこの小さな店の中で、この世界の時間を創っているかのように威厳に満ちていた。

ある棚には、西洋の細密な絵付けがされた皿や食器類、ひしゃげたような抹茶茶碗。またある棚には宝石がちりばめられた箱がいくつも並べられている。

床には、黒く鈍重な茶釜、時代劇に出てくるような長火鉢。船箪笥。

またある棚には、インド辺りの独特な風貌の仏像、その隣には、極彩色の磔刑(たっけい)にされたキリストの像。持ち主を失い、その輝きを失ったような銀の指輪やネックレス。

さらに奥の棚には木彫りの大黒、恵比寿。アラブの勇者が持つようなサーベル。アフリカの部族の仮面。

筆で書き殴ったような字の掛け軸。下手くそな油絵……。

ぼくは、世界中から集められた雑多なものの質量に、静かに圧倒されていた。