「なんで、急にそんなへんてこなこと聞くの?」

丁度その時店員さんが側に来たので、花帆に「ねえ、何かお腹に入るケーキを頼まない?」「いいわね、私はモンブラン、そしてコーヒーお代わりする、貴女は?」美代子は「ホットケーキとアップルティにする」と言いオーダーした。

やがて運ばれてきたティーカップやコーヒーカップを見て美代子は「ほら見て、ここの器はどれを見ても素敵よね」と花帆に同意を求めるように指さしながら言った。

「どれもブランドものよ、私のは英国のロイヤルドルトンのミントン、貴女のは何?」

花帆はカップを高く持ち上げて底を見た。「デンマークのロイヤルコペンハーゲンと書いてある。そうよね、他にもウェッジウッドやドイツのマイセン、日本のノリタケもあるみたい」「器が素敵だと中身も美味しそうに感じるから不思議だよね」と美代子が感心していた。

「花帆はサークル活動で学んだ油絵の知識が仕事に生かせたよね。世界的なオークションの会社へ就職できたから、いろんな有名な画に出会えてよかったでしょう」

「間近に高価な美術品を目にした経験は他の物に代えられないものがある反面、お金の価値観が分からなくなり人間不信になることもある。どうして大金を投資するのかもっと他のお金の使い方はないのかと、落札者の人物の顔をじろっと見ることもあった。しかしオークションの場合大半は代理人を立てることが多く、本当の買手本人にお目にかかることはめったにないのよ、不思議な業界よね」