「何それ。そんなわけ分かんない仕事嫌だよ。やんねーよ」「いいの?」拓未は岳也の肩に手を乗せた。
「じゃ他の人に回しちゃうよ? おいしい話だと思ってせっかく持ってきてあげたのに」「おまえがやればいいじゃん」「
俺は忙しくてそんな余裕ないもん。バイト二つ掛け持ちしてるしさ。こうやってバンド練習する時間もやっとなんとか作れたんだぜ。これ以上他のことなんて無理。あ~、時間があったらホント俺がやりたいよ」
「それって何曜?」とりあえず岳也は訊いてみる。
「月曜から金曜までのどれか。時間は午前十一時から夕方六時のあいだならいつでもオッケー。な、融通きくだろぉ?」揉み手せんばかりの拓未に、岳也は疑わしそうな目を向けた。
「そんないい話なら他に飛びつく奴いるんじゃないか? 俺、別に今金に困ってないし」拓未はわずかに口を尖らせる。
「人の好意を無にするんだな。俺はいつもおまえに世話になってるから特別に話したのに。あ~あ。もったいない。いーのかなぁ」「いいよ、別に」「その事務所の下の店で働いてる女の子、凄く変わったくしゃみをするから、おまえにうってつけと思ったんだけどなぁ」少し前を歩いていた岳也はぴたりと足を止めた。
「変わったくしゃみ?」拓未がニッと笑う。「先にそれを言えよ」岳也は拓未と肩を並べて歩き始めた。