くしゃみとルービックキューブ 5.
将来どうするつもり?とたまに訊かれるが、今のまま続行していくだけだ。すなわち、パソコンのサイトに自作のくしゃみ音楽をアップし、曲がたまったらレコード会社に送る。
傍らではバイトをしたり、こうやって友人のバンドを手伝ったりする。サイトには、「面白いですね」とか、「私のくしゃみ、録られてたらどうしよう」とかいうメールが届くくらいで、音楽業界の人から反応があったことはない。
レコード会社の連中も、送った曲を聴いてくれているのかどうか怪しい。だが岳也は特に焦っていない。物事はすべて成るようにしか成らない、と思っているからだ。じたばたしても仕方がない。
バンド練習を終えてスタジオを出るとき、拓未が声をかけてきた。割のいい仕事があるんだけど、やってみない?と。
「週一回、中野の駅前にある事務所に行って、来たメールを開ける。たったそれだけなんだ。そうするだけで、月五万もらえる」
岳也は眉をしかめた。「なんだ、それ」
「凄くないか? たったそれだけで月五万だよ」拓未の声が少しだけ裏返る。岳也は眉をしかめたまま彼を見た。
「メールってどんなメール?」さぁ、と拓未は軽く肩をすくめる。「なんかよく分からん」