「腕にはぶら下がらせてくれるんだけど、その間にお説教されるのよ」
「お説教?」他の二人は同時に呟いた。
「君は他人に対する絶望を知っているか、とか、世の中で一番面倒くさいものは人間だよ、とか必ずいわれるのよ。初めはジョークかと思ってたけど、結構マジみたい。中条さんが人間嫌いだなんて、見ただけでは見当もつかないよね」
「でも、美咲、結構いい雰囲気なんじゃないの」
「実はね」美咲は下を向いた。「もう付き合ってないのよ。わたしの方から断ったんだけど、実は初めからその気がなくて、わたしの方から言うように仕向けたんだとか考えたんだけど」
美咲の目が潤んできたのを茜はびっくりして眺めていた。告白でもされているようで少し気まずい。
「中条さんっていつでもそうみたい」
いきなり香奈が口をはさんだので、他の二人はびっくりして香奈の方を向いた。それまで、二人は香奈のことなど忘れていた。
「いつでもってどういうこと」美咲がおずおずと聞いた。
「中条は彼女ができるたびに、人間嫌いの素顔を見せるらしいぞ、とか兄がよく言ってたの。わたし冗談だとばかり思ってたんだけど……」
三人は、しばらく沈黙した。やがて、
「ふーん、結局みんなダメだったね」と茜が言った。
「やっぱり、恋愛って面倒くさい」
「まあ、それが結論?」呆れたように美咲がいうと三人の少女は笑い出した。