苦手なこと

病棟では患者さんの状態を見極めて、創(傷)の消毒やガーゼ交換などの処置を行ったり、術後の点滴や食事再開、退院許可などの指示を出したりしなければならない。

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僕はまだ、外科医になって間もないので決定権はなく、何かをする時は必ず上の先生の指示を仰いで許可を得る必要がある。

「〇〇さんなんですが、食事を再開してもよろしいでしょうか?」
「どう思う?」
「血液データもレントゲンも問題ないので大丈夫かと思います」
「ほかに見るべきところはない?」
「そうですね、お腹の痛みは改善傾向です」
「水分を摂ってみて吐き気はない?」
「ないです」
「排ガスはあった?」
「はい、ありました」
「じゃあ、腸が動き始めているということだから3分粥から始めてみようか」
「はい。では食事の指示を出しておきます」

なるほど。腸が動き始めれば食事を再開してもいいのか。腸が動き始めていることを確認するために、吐き気がないか、排ガス・排便はあるか、レントゲンで空気は溜まっていないかなどをチェックするのか。

「〇〇さん、今日の昼食から3分粥で食事の再開をお願いします」
早速病棟で看護師さんに指示を出して、そのまま病室に向かう。

「お腹も動き始めているので、今日のお昼から食事を始めましょうか」
患者さんに対してはあたかも自分で判断したかのように振る舞う。