【家出】

高校1年の夏休み、野球部を辞めたくて父と大喧嘩をした。父は私に辞め癖をつけたくなかったらしいが、当時の私には理解できなかった。

私は、高校1年でレギュラーになるのが目標だったが、1年でレギュラーになれなかったので、野球への情熱が冷めてしまった。私の思いは父に届かずその日も喧嘩の後、部活へ遅れて行くこととなった。

しかし、どうしても行きたくなかった私は、荷物をまとめてこっそり家出の準備をして部活へ行くふりをして家を出た。行く当てもなかったが、とりあえず隣県の祖母の家へ行こうと思った。

お金もないのでどうしようかと歩きながら考えていたらヒッチハイクを思いつき、自宅から1キロ近く離れた県道で親指を立て、手を伸ばし生まれて初めてのヒッチハイクをした。なかなか車は止まってくれなかったが、数分後ようやく1台の車が止まってくれた。

これでようやく、祖母の家へ少しでも近づけると思い、意気揚々と開いた助手席の窓から運転手に声をかけようとしたがそれは、

母だった。