猫のミミ

すると三毛猫は、プライドを傷つけられたのか、「フーッ!」と、目を三角にしておじいさんを威嚇した。手を差し出すと、爪でサッと引っかいたんじゃ。孫は、その場の重たい空気を察してのう。

「おじいちゃん、この子はセンターで、もうすぐ処分されるところだったんよ。推定年齢15歳(人間でいうと76歳)だって。なにしろこの通り、ぶさいくでしょ。それに、だれがきても「フーッ」とか「シャーッ」とか威嚇するんだって。おまけに歯がほとんどないの。前の飼い主は、よっぽどひどい飼い方をしてたんだと思う。でもね、ほかの猫よりもよく食べるし、体はどこも悪いところないんだって。それから、この子とってもおしゃべりで、いつもミャーミャー言ってるそうよ。だからおじいちゃん退屈しないと思うの。それにねぇ、このまま処分されるのって、かわいそうでしょう。だから、この子に決めちゃった」

おじいさんは少し困った顔になった。

「この猫は、わしになついてくれるかのう?」
「だいじょうぶ、すぐになれるから。とりあえず、ケージに入れたままにしとくね。そうそう、この子、カギしっぽでしょ。これは幸せを引っかけて来るとかね、幸せの扉を開けてくれる印だって。おじいちゃんのところにピッタシよ。この子と一緒だと、これからぜったい楽しいから」