見失う目的
その数日後、店の休みの日にサークル仲間がやってきた。いろんなアイデアが出た。モーニングとランチのメニューを変えたり、コーヒーカップを猫のデザインにそろえたりなどなど。いくつか採用が決まったが、なかでも、おとんとおかんが気に入ったのは、お店の中なかに、ゲンキも加えたらどうかということだった。しかも、パフォーマンスを取り入れて、猫も犬もみんな、メイド服を着せてお客さんに見せるという発想だ。
「とてもおもしろいアイデアだわ」
「メイド服? 何か気持ちがワクワクしてくる!」
さらに、木箱を並べた特別のステージをもうけて、その上にミラーボールを取りつけようと、もりあがった。つまり、お立ち台。昼夜2回かいの食事時間に、猫たちがそのステージの上で食事をする。バックに流すのはもちろん猫の歌で、おとんが詞を書き、おかんの合唱サークル仲間が曲をつけることも決まった。この新しい案に「これはいける」と、おとんも、おかんも喜んだ。
さっそく仲間に手伝ってもらい、手づくりのメイド服が完成した。白くてフリルがついたエプロンにドレス。足には色とりどりの靴下。頭にはフリルのついたカチューシャ。みんなが着ると、ペットのファッションショーを店の中でやっているような感じ。
メイド服は、ぼくもゲンキも着せられたが、着心地(きごこち)は最悪。ゲンキは最初からいやがって、洋服もカチューシャもはずそうとしたくらいだった。でも、おとんとおかんが、おやつをやりながら、だんだんとならしていった。