第5章 社会人に求められる能力とは
感情は扁桃体からやってくる
感情のメカニズムを考える際、脳に存在するある器官に注目したいと思います。それが扁桃体です。扁桃体は人間の本能などを司る大脳辺縁系に位置します。次頁の図に扁桃体の位置を示しました。脳のもっとも奥、ちょうどのどの上の辺りに扁桃体は存在します。
この扁桃体が感情や情動処理のために重要な役割を担っています。特に不安や緊張、ストレス反応などに深くかかわると大脳生理学では考えられています。
こうした脳の仕組みを知ることで、感情の抑え方がわかるようになります。実際に私はこれを理解したことでより成長した方を何人も見てきました。扁桃体を鎮める術を身につけることは、専門知識を獲得するのと同じか、それ以上に重要なことだと言えます。企業の未来と扁桃体の働きは切り離せないものなのです。
では、扁桃体が私たちを窮地に追い込むことがあるのはなぜなのでしょうか。脳の中には本能を司る辺縁系のほかに大脳新皮質というものがあります。大脳新皮質は計算能力や言語機能など知性をつくり出すところです。思考を司る大脳新皮質は仕事をしていく上で欠かすことはできません。
一方、扁桃体は感情を司っています。私たちは嫌なことが起こると、瞬時に反応し、目の前の景色が変わり、体調までおかしくなります。脳で何が起こっているかといいますと、扁桃体が大脳新皮質をハイジャックしているのです。
つまり、感情が知性の活動を押さえ込んでしまっているという状態です。嫌なことが起これば、それを解決するために大脳新皮質が働かなければならないのに、扁桃体にハイジャックされて考えることができなくなってしまうのです。
あとからなぜあんなことを言ったのか、なぜあんな行動をしてしまったのかと後悔するのですが、これは大脳新皮質が扁桃体に完全にハイジャックされた状態なのです。
このメカニズムを知らなければ立ち直ることは困難であり、それだけ時間もかかります。仕事や人生の失敗の原因のひとつに扁桃体があることを理解しておきましょう。