結婚の祝い

結婚式が終わると、日を置かずに祖父は満州鉄道の上層部に呼び出され、こう告げられたそうです。

「このたびの君の結婚は大正天皇陛下の大御心を表すものになっている」

唖然とする祖父に対し続けて、

「先の4月28日、ご結婚された日本留学中の李王垠(りおうぎん)殿下と梨本宮方子(まさこ)さまのお祝いに、特別、大正天皇陛下より、ご自身の駅である東京駅と同等の、第二東京駅(兄弟駅)を、朝鮮京城の地に建設するご許可をいただいたゆえ担当を命じる。

本来は、結婚式終了ののちすみやかに国民に対し、李王垠殿下の韓国皇帝ご就任の大まかな日程を発表する予定であったが、当日、朝鮮よりの暴漢が捕縛されたため急遽中止となった。しかし、即位の式典は内鮮(日本本土と朝鮮半島)の状況が確認できしだい行う予定である。

式典の来客をお迎えするため、即位後の巡行にお使いいただくためにも、予定通り来年(大正10年)に着工しなければならない。直ちに満州鉄道の一員として朝鮮京城に入り、その名(靖国)にかけて明治維新、日清・日露戦没者のお力添えを受け、無事準備が整うよう夫婦そろって励むように」

このような話だったそうで、祖父母の見合い話と急がされた結婚は、二人のためではなかったのです。

「大正天皇陛下の大御心」というものは元は歌だったと、のちに祖父がこの話を父にしてくれた際話していたそうですが、残念ながら父は歌そのものは忘れていて伝わっていません。しかし、中身は以下のような内容だったそうです。