今は一月も終わろうとしている。日が沈むのが早い。日が沈む前には何としても探し出さなければ……。
通勤時間帯でないので車内は空席が目立つ。通勤時の混雑が信じられない。私は、座っては窓の外を眺め、立っては広告を眺めたりして気を紛らわせようとした。しかし、心はざわつくばかりでどうしようもなく落ち着かない。悪い想像ばかりしてしまう。
もし図書館の外へ出ていたら……。車に跳ねられでもしたら……。ショーが失踪したという図書館を出て、二十メートル位進むと大きな交差点がある。その道路は県道沿いにあるので交通が激しい。
道路を挟んだ向こうには遮断機があり、信号機のことを理解していないショーにとっては非常に危険な場所だ。もしその交差点に入りこんでしまったら……。
ショーは言葉が出ない。「あー」と「うー」の母音のような警告音のみである。知能年齢は一、二歳であろう。言葉の発達は知能と比例するらしい。
外出時は信号機を指して「青だ。渡れ」なんて教えているが、同じ方向に指を指して「うー、うー」と言うだけだ。そんな仕草が、涙が出るくらい可愛かったりするのだからやりきれない。
事故だけが気がかりである。無事でいてくれ! ショー! 祈るばかりだ。
なかなか電車は着かない。こういう時に限って電車は滅茶苦茶遅く感じるのである。