図面を見た瞬間、「これはうちではできない」と私は思いました。しかし次の瞬間、「はい、できます。やらせてください」と返事をしていました。私は、その日、どんな仕事でも受けて帰ろうと決めていたのです。
見積もりを出し、何とか受注することができました。さあ、これからどうしようと思いました。
早速図面の製品を作れる会社を見つけて、その会社に加工してもらい、自分のところで組み立て、なんとか無事に製品を納入することができました。その時は嬉しくて体が震えるほどでした。こうして、一九六九(昭和四十四)年にTOTO中津工場と正式に取引が始まりました。
このころから「『できない』と言わない、どうしたらできるかを考える」ということが、私のポリシーとなっていきました。もしそこで「できません」とか「うちでは難しいです」と言っていれば、そこですべてが終わっていました。受注できないどころか、その後の私もなかったことになります。
あの日あの時あの瞬間の「できます、やらせてください!」の一言が、私の人生を開いてきたのです。とにかく、できないことを考えるのではなく、どうしたらできるかを考える。いつも社員にこのことを言ってきました。