「いや、今日はオフでね。今は、六本木にいるんだよ。クエストビルのジパングで、友達と踊ってるとこ」
「ふぅーんそうなんだ。そんなときに何で俺んとこなんかに電話してくんの?」
翔一は、スッとぼけて訊いた何の用なのか、だいたいの見当はつく、毎度のこと。
「いやー、あのね、この間原宿の店に来たとき翔一君が言ってたあれ(Sのこと)すぐ手に入るの?」
片山は、少しかすれ気味な声で言った。翔一の頭の中では『ビーンゴ』って声が、こだましていた。さっきはこっちから電話して、貰ってもらおうと思っていたものを反対に、くれてやれる立場に逆転した瞬間だった。
『もう少し、ジラしておこうか』
「うーん、ちょっと訊いてみるよ。じゃあねー、マライヤでコーヒーでも飲んで待っててよ、すぐに行くから」
翔一が言った。
「本当? じゃあ待ってるからごめんね、急に」
「いいって、いいって、お互い様だよ。じゃ、10分か15分後に」
そう言って、翔一は自分から電話を切った
「ふーっ」と、息を吐いた翔一が、山崎の顔を見て
「グット・タイムスだな」と言うと
「えっ、次の選曲ですか?」
なんて勘違いなことを言ったから、「ちがうよ」そう言いながら翔一は、フフッと笑った。