セットリストNo.2(第二章)19 No Parking–Midnight Star

新二と連れの女の子は、最近オープンした『CLUB ZEM』に行くと言って、翔一と別れた。自分のお店「My Points」に、戻った翔一は「ふぅー」と、深いため息をつく、そして思った。

『これ(S)を持っていると、どーも落ち着かないなぁ』

彼が、今一番恐れていることは、サンプルとして手渡されたモノを、『自分で使ってしまおう』その誘惑に自分が、負けてしまうことだった。

『そうだ、片山にこれあげちゃおう』

彼は、それはグッドアイデアだと思い電話に、手を伸ばした。受話器を取ろうとしたその時、外線着信を示すランプが点滅した。

「はい、六本木My Pointsです」

翔一が、営業用の受け答えで電話に出ると、

「えーっと、あれっ翔一君? もしかして」

受話器の小さなスピーカーから聞こえてきたその声は、今連絡を取ろうと思っていた片山の声だった。翔一は、右の眉毛をもち上げて

「どうしたの、片ちゃーん」
「何で解ったの?  俺、一言しか言ってないのに」
「何でって? 俺DJだよ。耳の性能の良さで、ギャラ貰ってるんだから。わかんないわけないでしょ、お互いにね」
「それは、そうだね」
「今日は、どこにいるのよ?」