俳句・短歌 句集 四季 2020.11.02 句集「抱く」より三句 句集 抱く 【第14回】 松永 みよこ ―春― 身に余るミモザ抱えて人を待つ 猫の恋吾よりいくばくかは清く ―夏― 膝頭抱いて鎮まぬ青嵐 幸せを温めなおす五月かな ―秋― 千の菊抱きてあまりにも一人 りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ ―冬― 雪うさぎ今消えゆきし身を抱き 酉の市ちがう男の手も温し 平成の句姫、みよこの初句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 冷麦や田舎の昼に音はなし 組みし指いまだ震えている五月 約束はせぬ約束の新樹下
エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『インスタント・ストーリーズ』 【第6回】 紀伊 みたこ 知らない番号からの電話にでるとカスタマーセンターのお姉さんで先日の夫は実は… 帰宅したユウタはスマホ片手に目の前のカレーを表情も変えずに頬張り続けるのだ。「美味しい? 時間をかけて作ったのよ」「あぁ……うん」しびれを切らしたサトコの問いかけにも、ユウタは返事ともいえない返しをしてくるだけだった。サトコはガックリと肩を落とし、会話はプツリと途切れたように終わりを告げた。昼間の姿は仕事モードだったからなのか……。はたまた何か後ろめたいことでもあったのか……サトコの中で疑惑だけ…