当時男の浮気は廓(くるわ)遊び、当然女房は文句を言う

〇 家にないものでもないと女房言い
〇 間男をするよと女房強意見(こわいけん)

封建時代と言われながら、結構、女房の不倫も多く、「元禄御畳奉行の日記」によれば、〇〇件余りの密通事件の中で、女の浮気の方が多いそうである。今日のラブホテルに当たるものが当時出会い茶屋として既にあった。そこでは「よーし、やるぞ」とばかりに男以上に女は頑張っていた。

〇 出会い茶屋男は半死半生なり
〇 出会い茶屋許せの声は男なり
〇 出会い茶屋あまりしない顔で出る

出会い茶屋へ行く金のない者は野良や、雪隠(せっちん)、漬物小屋、あるいは亭主の留守に忍び込む。

〇 雪隠を一人出てまた一人出る
〇 足音のたんびに腰をつかいやめ
〇 見つかって椎(しい)の実ほどにして逃げる

椎の実は男のソレ、美しい女の盛りも短いが、あれほど逞しかった亭主の筋金入りも、落日が来る。すると強精剤に頼ろうとする。それを売るいかがわしい店を四ツ目屋と呼んだ、長寿丸(ちょうじゅがん)や地黄丸(ぢおうがん)である。

〇 目を四つ併せて泣き出すいい薬
〇 四つ目を合わせて死にます行きますの
〇 あべこべさ長寿丸で死ぬと言い
〇 ああ仁が少ないかな地黄丸

論語の「巧言令色鮮(こうげんれいしょくすく)なし仁(じん)」(うまく言葉を使っておべっかを言う人は心ある人が少ない)。当時、男の精の源は腎臓と考えられていたため、仁に掛けた名句。やがて薬も効かなくなり、男は矛を収める時が来る。

〇 女房の機嫌取り取り弱るなり
〇 奢(オゴ)るヘノコ久しからず腎虚(じんきょ)なり
〇 すりこぎのようにはならぬ愚図郎兵衛(ぐずろべえ)
〇 今は只小便だけの道具なり
〇 爺(じい)さんと婆(ばあ)さん寝たら寝たっきり