「片ちゃんが冷たいやつをひくときは、いつもどんなルート(経路)で、手に入れてるの?」
「俺の場合は、DJ関係のブレーンからが、ほとんどだね」
「そっか、他に考えられる入手ルートは?」
「そうだねー多分、横浜あたりの立ちバイか、六本木、渋谷、新宿あたりの不良(ヤクザ)とつながりがある奴なら、そっちから。まぁ、こんなところでしょう」
おそらく片山は包み隠さずに本当のところを口にしている。
「そうすっと、末端購入者側からみれば、どこで買っても量やプライスは、似たり寄ったりって感じだね」
「そうだねぇ、だいたい同じだね」
片山は、視線を右上にもっていきながら答えた。
「最近は、冷たいほうの需要が伸びてきてる感じがするけど、どうなの?」
翔一が言った。
「水嶋君は、そっちのほうはやらないみたいだから、解らないと思うけどSだけに限定したとしてもクサの市場よりも、ずっと多いはずだよ」
片山は言った。
「やっぱり、そうだろうねぇ」
それは、翔一も理解していた。
「そりゃぁそうだよ。クサの場合はさぁ最低の単位が10グラムからで、1グラム3000円なら、現金が3万円必要でしょ、最低でも。それ以下の話は、あまり聞かないしね。で、Sなら1パケ1万円から手に入れられて、その量があれば、1人で充分遊べる。こう考えれば、Sに走る奴がいても全然おかしくないでしょう」
こう言う片山の考えはたぶん、当たっている。
「体には、よくないと思うけどね」
「確かに、でも俺にこんなこと訊きに来て、もしかして、そっち方面にも手を広げるの?」
片山は何かを期待をした目を向けて言った。
「俺としては、あまり乗り気じゃないんだけど相棒が、そんな話をして来たんでさ」
「Sだけ?」
すこし目を輝かせて、片山が聞きなおした。
「クサのほうは、今まで通りやるけど、その他に、Sとコーク(コカインのスラング・隠語)を、やることになるらしい」
「それじゃ、そのうち俺もオーダー入れるかもしれないよ」
片山が言った。
「あぁ、うーん、でも俺としては、あまり仲間内に、こっち側のドラッグ流したくないんだけどね」と、言ったときに彼は『はっ』とした。
結局、ドラッグを流すことになるのなら今、自分が言った言葉なんか、ただの詭弁にしかならない。翔一の脳裏には、その言葉がはりついた。キベン。