セットリストNo.2(第二章)
12 Freakshow On The Dance Floor–Bar-Kays
「ありがとうございます」
香子が、答えると、ミックはDJブースに戻っていった。
「あんなスタイルで、見た目はすごくよさそうだけどいろんなことを含めて言えば、彼はチャランポランな人間。なんだけど選曲のノリは、ピカイチだよ。きっと満足させてくれるから、そろそろ行こうかダンスフロアーへ」
「翔ちゃん、私、もうギブアップ」
香子は、動きつづける翔一の肩に、両手を広げてぶら下がり、動きを止めた翔一の耳もとで言った。今夜2人が出逢ってから、ここまで接近したのは初めて。翔一は、自然に香子のしぐさを受け入れ。自分の両手で、彼女の体を力一杯優しくありったけの愛おしさを込めて、抱きしめた。
みだれる呼吸と、心臓の鼓動をお互いが、お互いのものをカウントしていた。2人は似ている。
やがて、翔一の首にまかれている香子の腕から、ゆっくりと力が抜けていくのを感じ取ったとき、彼女の体に回した腕に、もっともっと愛おしさと力をこめた。香子は、強く抱きしめる翔一の腕のなかで、全身から力を抜き、体を預ける。
少し顔を横に向けて、香子の頰に唇をあてた。彼女は、翔一の唇が自分の頰から離れると、名残惜しそうにダンスフロアーからフェードアウトしていった。フロアーに残った翔一の足もとには再びステップが、戻る。