そう思いながら、お琴は立ち上がって、明日に備えて眠ることにした。現時点で晴れない心は何かに没頭しているに限るという考えのもとでゆっくり晴らしていこうとお琴は考えていた。

それからというもの、お琴はこれまで以上に店の手伝いに励んでいた。両親は気にしていたものの気丈に振舞う娘に何も言わなかった。両親は縁談が破談になるときは決まって店のことに精を出す娘を何度となく見てきていた。

しかしこれまでと違うのは許婚という立場である。お琴の将来を想って受けた縁談であって、誰よりもお琴に幸せになってほしいと願ってのことだったが、お琴が無理しているなら間違いだったのだろうかと両親は考えてしまう。

しかしこちら側から子の縁談をなかったことにしてもらうことは無理に等しい。何かお琴を元気づける方法はないかと考えた。しかし思い浮かんだことは、精一杯頑張っているお琴に少しの休みをあたえたら、ということだった。

そこで両親は、お琴に二日間の休みを提案することにした。

その夜、夕餉が終わった後に家族三人でお茶を飲んでいた。他愛ない話をしていたものの、お琴に両親から何か話があるのだろうと想像がついていた。

「……私、無理しているように見えましたか?」

一つの話が終わった瞬間を見逃さず、思い切って言ったお琴は眉を下げながら両親を見ていた。お琴のその様子に両親はバツが悪そうな表情をしていたが、観念して頷いた。「私たちはお前に無理をさせたくて、縁談を持ってきたわけじゃないからな」

「無理をしていたつもりはないのですが、そばから見ればそう取られてしまいますよね」

手に持っていた湯呑みを卓袱台に置いて、困ったような表情をしていたお琴に両親はどう言ったらいいのか悩んでいた。

「……本当にたいしたことではないのです。ただ私が変に悩んでしまっただけで……」

「今は家族だけなのだから教えてくれないか?」

「無理にとは言いませんが、何を言われても私たちはお琴の味方ですからね」

「……」

両親それぞれからの言葉に、それだけ無理をしているように見えていたのかと、心配を掛けて申しわけない気持ちになった。こうなるとさすがに自分の抱えている悩みを言わないわけにはいかないと思い、お琴は両親に胸の内を打ち明けることにした。

「本当に土方様にとって許婚という選択はいいものだったのでしょうか。大望あるあの人の邪魔にならないでしょうか」

言い終えてお琴は俯いた。

悩まなくてもいいことで悩んでいると思われても仕方ない内容だろう。そして、悩むということはこの縁談に疑問を持っていることにほかならない。

両親も困ったような表情で押し黙っていた。

次回更新は11月5日(木)、20時の予定です。

 

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