こうした人間関係とタイトなスケジュールにもかかわらず、『BGM』はかなり音作りにこだわった作品となっている。

最初聴くとその暗さに驚くが、じっくり聴いてみるとそのサウンドはアヴァンガルドな実験的要素がふんだんに盛り込まれている。

一つは音量によって効果が違うということ。

低い音量で聴いている分にはノイジーでよくわからないが、大音量で聞くとまるで違う。

田中は以下のように評する。

 

「イギリスのポスト・パンクなどの影響色濃い批評性の強いものになった。

例えば人間の焦点の構造を利用した視覚トリックで、近くで見るとアインシュタインの顔に見えるが、遠くから見るとマリリン・モンローに見える、MITが作った『ハイブリッドイメージ』という表現画法がある。

『BGM』のサウンドの二重性には、それにも似たサブリミナルな構造があった5」

 

さらに収録曲の『HAPPY END』や『LOOM』の後半では、ブライアン・イーノのアンビエント・ミュージックをいち早く取り入れて、YMOならではの構成にしている。

『BGM』は、やはりYMOが最先端であることを、強烈に印象付けるアルバムなのである。

さらに

「細野晴臣がロンドンで触発されたのは、当時の現代音楽であった。

(中略)いわゆる従来の堅苦しい理詰めの現代音楽ではないロックやパンクを経過したピュアな音楽の楽しさがそこにはあった 6」のである。


1――『レコード・プロデューサーはスーパーマンをめざす』

2――鋤田×Yellow Magic Orchestra

3――『リトルモア2002年21号』

4――坂本龍一『音楽は自由にする』

5――『シン・YMO』

6――『シン・YMO』

 

▶『YMOと、その時代。』を最初から読む
1978~1984年の間に何が起こったのか? サブカルチャーをポップカルチャーへと加速させたYMO。この時期特有のある性質とは…

▶『重版出来!人気作品ピックアップ』を最初から読む
「あの黒柴も気になっていて…」と話すと、店員からの想定外の返事が――「あの柴犬は実は…」

▶『YMOと、その時代。』の人気回を読む
反戦フォークを歌い「これでYMOは終わりです」と冗談を言うと、ブーイングの嵐に。キレた坂本龍一は「うるせえぞ馬鹿野郎!」と怒鳴り……

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp