(そんな人たちと縁ができるのなら両親も最初に悩んでいたことなんて払拭される……)
勧められる縁談にお琴はそこまで乗り気ではないが両親が乗り気になっていた。両親が喜ぶならと考えていたが、時間が経ち、日取りの話が進んでいく中でお琴の中でも変化があった。これまで話程度にしか聞いていない相手に一度だけは会ってみたいと思った。
それで諦めがつくのであればお琴はしっかりその相手をたてようと考えた。そう思った日の夜に両親にその話をし、次回の土方家での話し合いのときにお琴も一緒について行くことになった。
数日が経ち、店が休みの日にお琴たちは土方家に足を運んでいた。客間に通されたお琴たちの前には、縁談を提案した為次郎を筆頭に親族が並んでいた。その末席に座って目を閉じている人物こそ、末弟・土方歳蔵であった。
「本日はお越しいただいてありがとうございます」
「いえ、二人を会わせたかった気持ちもありますから」
お琴が一度会ってみたいと言ったことを為次郎に両親から伝えていた。本来なら当人同士を席につかせていなかったが、お琴が同席するということで歳蔵も連れてこられていた。
「では二人もいることですし、祝言の日取りを決め」
「その話待ってもらえるか」
唐突にそう言われ、一斉に視線がそちらへ向く。その言葉を発したのは他ならぬ歳蔵であった。お琴も顔を向けたときに目を開けた歳蔵と目が合った。しかしすぐにその視線は外された。
「歳蔵、突然どうした?」
「普段はそちらの家に兄上が縁談をまとめていたから私の意見を伝えられていなかったが、この際伝えさせてほしい」
その言葉にお琴は心臓が跳ねあがる。お琴は歳蔵が何を言おうとしているのかわからなかったが、今までと同じようなものを感じていた。
(やはりいつも通りになるの……?)
少し眉を下げて視線を下げたお琴を横目に歳蔵は一瞬見て、すぐに視線を親族に向けてこう言った。
「私には叶えたい大望がある。だからもうしばらく私を自由にしておいてほしい」
凄く真剣な表情で全員に視線を合わせる。歳蔵の親族はその心意気に肩を落とした。そしてこのように提案した。
次回更新は10月29日(木)、20時の予定です。
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