CASE 4 避難誘導に背を向けた誘導灯
とある事業所の点検時のことである。防火扉前に避難口誘導灯が設置されていた。防火扉が壁に収まっている時はその不具合にはなかなか気付けないのだが、防火扉が閉鎖されると問題が露わになる。
なんと避難口誘導灯が閉鎖した防火扉と向かい合ってしまうのだ。防火扉の壁を照らす形になっていたため、避難誘導ができない状態になっていたのである。
普段は防火扉が閉まっていないので、これを施工した人も、検査した消防官も、点検した人も、この状況に気付かなかったようだ。
ここまで4つの事例を挙げたが、これらの不備がいずれも点検業者に見落とされていた現実がある。
消火器の“歩行距離20メートル”、“能力単位の計算”は基本中の基本。誘導灯の“警戒距離”、“誘導方向の正誤”も基本中の基本。
でもその基本通りに“消火器の能力単位は足りているか”、“誘導灯の警戒距離は大丈夫か”と、意識した点検はできていないのである。
ではなぜ、この基本中の基本が疎かになるのだろうか。それは消防設備点検全般において、今ある設備状況を疑うことなく、設置されている設備の外観や動作に問題が無いかの点検・確認に終始することが、まず第一の要因である。
これは前章で紹介した“検査済みという太鼓判”が、設備の設置状況を疑わないという土壌を作ったためであろう。
また、消火器や誘導灯は、一番触れる機会が多い馴染みの設備であるがゆえの宿命とも言えるかもしれない。消火器も誘導灯も、設備の点検作業自体は軽微なものだ。
消火器の清掃や外観確認、誘導灯のランプやバッテリーのチェックなど、難しい作業がないので新人が最初に教わる設備として定番となっている。
しかし、その容易さゆえに、設備の重要性に対する認識の欠如や点検方法の理解の浅さ、さらには点検作業を惰性で行うなど、基本を疎かにする悪循環を生み出すのだろう。
私は消火器と誘導灯の点検に関して、常に基本に忠実な点検を徹底してきた。残念ながら、基本を疎かにして点検されていた現場を私が担当することで、いきなり不具合が大量発生してしまう事例は少なくない。
消火器や誘導灯のように“誰でも点検できる設備”を、誰よりも極めて“誰にもできないレベルで点検する”こと。基本を怠らず、徹底的に極めていく姿勢こそが、最強の消防設備士の“入り口”と言える。
最後に、最強の消防設備士への道を進む上での極意を一言にまとめたい。
極意 一、基本を怠らないこと
“消火器・誘導灯の鉄人たれ!”
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