千代ちゃんとBobとマヤ
“どこへ行くつもりなんだろう?”
行き先も決まらないまま、マヤは歩いている。
広がっている砂浜に、無数のスニーカーやサンダルの跡が生き物のように重なり合ったり飛び出したりして自由自在に闊歩している。
砂を踏み込んだ靴跡は鮮やかに浮かび上がり、その大小の形が絡み合っていて不可解な図形を描いている。
薄い潮の香りを含んだ風が、時折何かつぶやきながら通り過ぎる。青い海の光を受けながら、マヤはただひたすら砂浜を歩いている。見上げても空は見えない 海の青に吸い込まれたのかもしれない。
そんな時後ろから誰かが声をかけてきた。振り向くと背の高い痩せた男がいた。
「どこへ行くのですか? この先は行き止まりですよ」静かな声。
「行き止まりの道なんてある筈ないわ」とマヤ。
「邪魔しないで!」とマヤが叫ぶと、男はニ〜っと笑った。
「なんだ!その笑いは、何がおかしい〜」無性に腹立たしかった。
なぜだ? 男は突然得体のしれない怪獣に姿を変えていた。
燃えているような赤い眼をかっと開き、両手を広げて迫ってくるその不気味な相手と戦う術もないマヤはギリギリのところまで追い込まれ、ただただ右往左往して逃げ道を探している。
終わりか〜萎んだ心のつぶやきが指の先まで届いてくる。これが行き止まりの道なのか〜。
絶体絶命のこんな時でも、息を深く吸い込んで、両手を広げて地面をければ簡単に飛べた若かった頃の自分を思いだしながら、マヤは男を一瞥して思いっきり両手を広げた。
そして力一杯地面を蹴った、その瞬間目がさめた。
夢かあ〜少しばかりの悔しさと、ホッとした気分とが、混ざり合って私を包む。
右に進むか左に曲がるかそれとも真っ直ぐ行くか、人生そのものがギャンブルみたいだナ とマヤは思う。生きていると毎日様々な選択を迫られる。その対象は人の数だけには収まりきれない。
その中で正確な選択であったと確証出来るものはあるのだろうか?
もしその時、間違った選択をしたとしても、その人が選んだこれから歩んでいく道であり、もしかしたら、途中で大きく反転するかもしれないのだ。ギャンブル好きの言い訳みたいだナ、とマヤは思わず苦笑。
方向音痴のマヤにとって世の中は迷路に溢れている。でも迷路は道だけではない。
人生の迷路となると、すこぶるややこしい。だから、いつも道に迷っている。そして、負け惜しみで言うならマヤはその凸凹迷路を楽しんでいるところもある。