はじめに
出産したこともないのにどうしてそんなにお産が怖いの?
どうしたら出産を怖がる妊婦さんの気持ちを落ち着かせてあげられるのだろう?
妊婦さんはどうして知らなくてもいい情報を探しに行って、心乱されているのだろう?
医師として28年、産婦人科医として24年、開業医として12年、毎日の患者さんとの会話の中でこんな疑問を持ちながら診療しています。そんな疑問を持ちながら、実際は妊婦さんやこれから妊娠・出産に臨もうという未産婦さんの出産に対する恐怖心を0にしたり、忘れさせたりできているかというとなかなか難しい現実があります。
日々出産という人生最大の大仕事を乗り越えてもらうお手伝いを生業としている者として、何とかできないものかと、今も毎日考え、話し、試行錯誤を繰り返しているのが私の日常です。
この本を書いてみないかと、お話をいただいたときに考えたのは、患者さんたちの、恐怖や痛み(の想像)の源である「マイナスの情報」に対して、私なりに妊婦さんたちに対極の考え(情報への反対意見)をお伝えできるのではないかと思い立ち、日常診療の患者さんとの会話の中でいただいたヒントや、病院スタッフとの会話の中で行きかう「プラスの情報」を本にしてみたいと思ったのです。
時間とともに変化し、次々に新しい情報が湧き出てくる現代。情報を手に入れる手段も、デジタル化され、早く、安く、印象的かつ衝撃的なものに変化し、瞬時に上書きや変更されることから、「情報に絶対はない」と感じます。私が本書で発信する情報も、自分でいうのも何ですが、絶対ではなく、時代とともに変化するものだと認識しています。
なので、本書で述べる見解(情報)は、論文のようにサンプルサイズの大きいデータを素に作られた信頼度に重きを置くものではなく、今私の持っている大小さまざまなデータから考えられる「見解」であり、断定的なモノでも普遍的なモノでもないとも言えます。
本文の中には比喩的表現も多くなり、あくまでも常識とされているような「情報」に対して、視点を変えた「見解」ととらえていただければ、誤解は少ないのではないかと考えます。
これから妊娠、出産を控えて、何を信じればよいのか迷っている妊婦さんや若い女性、その家族の方々にとって、妊娠・出産を理解する時の参考にしていただき「考え方」のヒントになって、心の迷いや苦しみが少しでも軽くなるお手伝いができたら、私にとって最大の喜びです。
多くの女性が経験する人生最大の挑戦であり、喜びであり、苦痛でもある出産を、良いものにして、その先の人生をも明るく輝けるものになることを願って綴ります。
2025年6月 吉日 羽田健一