店には猫が1匹も顔を出さない。ぼくと5匹の仲間とゲンキが洋服を着て歩きまわる出番はなくなった。
変わったのはそれだけではない。壁に大きなホワイトボードをかけ、いろんな猫の写真をはって、里親の募集をはじめたのだ。それに、おとんはホームページをつくって、ワンちゃんとネコちゃんの里親さがしをはじめた。
もちろん、裏の居間は、ぼくとゲンキと5匹の猫たちで住み分けている。店が閉まると、みんな居間から店に移って、好きなように暴れまわるんだ。キャットタワーで遊んでも、上の猫通路を歩いても、おとんとおかん以外には、だれも見ていない。
収入はガクンと減ったが、ぼくたちの食べ物さえ、ネットでたのめればそれで満足だと、おとんもおかんも言う。ゲンキと朝晩のさんぽもはじまった。
おかんは朝、カウンターでスーパーのチラシを、また、すみからすみまで見るようになった。おとんの再就職活動もはじまっている。ゲンキの体重がもとにもどり、ぼくたちの毛並みもつややかになった。
しばらくすると、おとんの仕事が決まった。パソコンの出前修理だ。お年寄りやパソコンの初心者向けに1回3000円で請け負う。電話での依頼はボチボチ。ゲンキも天気のいい時には、車に乗って一緒についていく。
幸せって空気みたいなものかもしれない。だってゲンキが帰ってくると、いつも季節のにおいがして、それだけでうれしくなるからね。時々、へんなにおいのすることもあるけれど。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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