【前回の記事を読む】「65歳以上の方は、猫の里親にはなれません」と門前払い…それでも80歳近くの男性が、お迎えできた理由は……

猫のミミ

すると三毛猫は、プライドを傷つけられたのか、「フーッ!」と、目を三角にしておじいさんを威嚇した。手を差し出すと、爪でサッと引っかいたんじゃ。孫は、その場の重たい空気を察してのう。

「おじいちゃん、この子はセンターで、もうすぐ処分されるところだったんよ。推定年齢15歳(人間でいうと76歳)だって。なにしろこの通り、ぶさいくでしょ。それに、だれがきても「フーッ」とか「シャーッ」とか威嚇するんだって。おまけに歯がほとんどないの。前の飼い主は、よっぽどひどい飼い方をしてたんだと思う。

でもね、ほかの猫よりもよく食べるし、体はどこも悪いところないんだって。それから、この子とってもおしゃべりで、いつもミャーミャー言ってるそうよ。だからおじいちゃん退屈しないと思うの。それにねぇ、このまま処分されるのって、かわいそうでしょう。だから、この子に決めちゃった」

おじいさんは少し困った顔になった。

「この猫は、わしになついてくれるかのう?」

「だいじょうぶ、すぐになれるから。とりあえず、ケージに入れたままにしとくね。そうそう、この子、カギしっぽでしょ。これは幸せを引っかけて来るとかね、幸せの扉を開けてくれる印だって。おじいちゃんのところにピッタシよ。この子と一緒だと、これからぜったい楽しいから」

孫は、そう言って足早に帰ったそうだ。あとで聞いたんじゃが、孫も内心なれるかどうか、そうとう心配しとったらしい。

おじいさんが近づけば体をまるめて「フーッ」、そばに寄れば「シャーッ」が続いたそうな。まったく水も飲まず、用意しとったキャットフードも食べんかったんじゃ。

「せっかくお前がきてくれたんじゃ。ばあさんに話しかける気持ちでつきおうてみるか? じいさんに時間はたっぷりあるからのう。ばあさん、あの世からどうして飼うたらよいか教えてくれよ」