【前回記事を読む】ホテルのガレージで昆虫採集を始めようとすると、警備員に呼び止められた…面倒くさいと思いつつ、あるものを手渡すと態度が一変……
1回目の訪朝
2 平壌(ピョンヤン)市内での採集記
到着して早々にホテルの中やガレージで採集を行った私でしたが、この活動を日本へ帰る日まで毎日のように続けていたため、思った以上の収穫がありました。
それは昆虫類だけでなく、採集活動を通してホテルの従業員と毎日のようにコミュニケーションをとり、時に談笑したり、時に情報交換をすることで私の活動への理解が深まったからです。
特に守衛さんやガレージの警備員の方は、私の採集活動の様子を直接見ていただけに、良い信頼関係を築くことができました。しかし、困ったのは食堂や喫茶店、売店で働いている従業員の方たちでした。
この方たちの中には、滞在して2週間ほどが経ってもなお訪朝目的を信じてくれない人もいて、特に若いウェイトレスの方からは、「あなたは私をずっとからかっていますね! 意地悪な方です」と言われたほどです。
その時には、(関西人でもさすがに2週間はだまし続けられへんで!)と突っ込みつつも、そんなにも「昆虫学者」は珍しい存在なのかと愕然としたものです。
また、朝鮮語で「昆虫」は「コンチュン」と発音しますが、建築は「コンチュッ」と発音します。
私の発音が悪かったのも原因かもしれませんが、喫茶店で働く女性の方に「建築士」と長らく思われ尊敬の眼差しで対応してもらっていたのですが、私が、「建築士ではなく、昆虫学者で、昆虫の研究ですよ!」と訂正して伝えると、目を丸くして、2本の指をテーブルでパタパタと交互に動かしながら、「……ポルゴジ(虫けら)の……研究をしてる……人?」と心の奥底からドン引きされたことを今でも鮮明に憶えています。
それほど、珍しい存在だっただけに、野外での採集でもやはり同じような反応をされました。
しかし、人にどう見られようが関係ありません!
調査期間には毎日のようにホテルの外へ出て、市内のいろんな場所で採集を行いました。
初めての採集なので困難も多かったのですが、多くの学びと気付きを得ることができました。