1番大きな課題が世間一般で評価されているのに自分の心が全く満たされていないことだ。満員電車のサラリーマンよりも断然稼いでいる。同世代のほとんどより名前が知られている。会ったことのない人間から毎日ありがとうと言われる。
それが全部まったく響かない。届こうとして来るのに私の内側のどこにも着地しない。空振りのまま通過していく。お前ら私のために応援してくれてるのか知らないが私はここにいないぞ。ここにいるのは本山千晴という名前のついた人形だ。
それ以前に本当の自分などはいないのかもしれない。
私の心はどこを開けてもどこを開けても応接間。生活感のない洗練された空間が広がるのみ。
洗練と言えば聞こえは良いが、人間味がない。そこには人に気に入られることにチューンアップされた、外連味たっぷりな客人対応用の私がいるのみ。
他の部屋には個人を感じられるようなリビングや寝室などのプライベート空間が広がっていると思うのは大間違い。もうそのすべてが応接間に改造されている。どこにも完璧と評される本山千晴がいるのみ。応接間しか絶対に見せないのではなく、応接間しかないのだ。
ちやほやされたいという欲望は、中身が空っぽな人間がその容器に他人からの承認で満たそうとする最も浅ましい行動なのではないか。自分が主体的に取り組みたいことがなかった人間の終着点なのではないか。答えろ。答えてみろ。やっぱり答えてくれるな。黙っていてくれ。
金も地位もそして最も欲しかった賞賛も腐るほど持っている。
でも満たされない。
なぜかと言えばそれらが全部ありのままの自分ではなく装った本山千晴が築き上げたものだからだ。
自分ではあるが大手を振って自分だとは言えない。
良い娘、勉強のできる生徒、クラスの女王、知性派タレント。ずっと役を演じているだけだ。
舞台から降りたことが1度もない。楽屋に引っ込んだことが1度もない。引っ込む楽屋などない。物心ついてから現在までずっと板の上に立っている。
外面の本山千晴がじわじわと内面の本山千晴を蝕んできている。
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