第一章 家族ネタ
昔の子供
A お嫁に行くと、赤ちゃんが生まれるって、子供の頃から知ってた?
B そんな事知るわけないわ。
A 妊娠っていう言葉さえも知らんかったわ。
B そうや。そんなん誰も教えてくれへんよ。
A 女の人が、大きいお腹を抱えて歩いてるのを見て、ああ赤ちゃんがいるんやなあぐらいしか分からんかった。ましてや、それを妊娠という言葉で認識した記憶はございません。
B えらい上品な言葉でどないしたん。
A ちょっとお育ちのいいのを披露したんです。
B 誰が育ちがいいって?
A 教養が邪魔をして。
B 教養? 今日どこに用があるねん。
A 用なんかない。お前と話してたら、余計におかしくなる。教養のことはおいといてや。
B どこにおいとくん?
A 赤ちゃんが、おへその中から外の様子を見て「もうそろそろかな。もう出ようかな」って思ってると思とってん。
B お前そんなアホやったんか。そんなこと赤ちゃんが思ってる訳ないやろ。そんなケッタイなこと、誰に教えてもろたん。
A おばあちゃんやろか。
B おばあちゃん、そんなアホなこといわんやろ。
A それ以外に疑問に思ったことないか。
B 結婚してないのに、なんでお腹が大きくなってんねんって思ったことはある。
A どう解決したん。
B 本当は結婚してはったんやなあって、思うことにしてた。
A 単純やなア。子供にそういうこと尋ねられたらどうする。
B 困るやろな。どう答えるお前は。
A 重々しく権威を持たせて、敵を威圧して、「結婚してたんです」って納得させなしゃあないわな。
B ほんま子供って、どんな質問をしてくるか想像つかんもんな。びっくりするような質問してくる時があるで。
A 女房とエッチなテレビ見てて、ふいに子供が起き出して来た時は、あせるもんな。慌ててテレビ消すもんな。
B なんで消さなあかんねんって思うけど、やっぱり消すもんな。
A 今映画はクライマックス、ええとこや。人目を忍ぶ悲恋の男女が、ひしと抱き合い、さあこれからって時に「おかあちゃん」ってやって来られてみ。慌てるで。