尋ねると静子はちょっとギクリとした顔をした。

「別に……どうして?」

「いや別に……そう言えばあの河井さんてさ、女性客と出ていったな」

今夜レストランに入ってすぐ、目に飛び込んできた静子のあの甘い顔がどうにも忘れられなかった。あの河井と話していた時の静子の表情は、最近優人には全く見せていないものだった。第一、静子にとって優人は自慢の彼氏で、友人だなんて紹介はされたことがなかったんだ。そして最初に河井と話していた時に優人に声をかけられ、振り向いた静子の顔は、今のギクリとした様子と重なった。

「また飲みにでも行ったんじゃない……。お客さんに誘われることもあるから……」

静子は呟くように答えた。

「ああ、たらしっぽいよなあ」

静子は無言だった。何だ? 何だか……。

アパートに着くと、静子はまず風呂の準備を始めた。優人は上着を脱ぐと、静子を抱き締めた。

「止めて……疲れてるから。汗だくだし」

静子は身を固くした。

「いいだろ」

「イヤよ」

優人の手を振り払うと、静子は寝間着の用意をし出した。優人はびっくりして立ち尽くしてしまった。ハッキリと拒否するなんて、こんなことは初めてだった。確かに忙しそうだったけど……。

「……どうしたの?」

「優人……悪いけど帰ってくれない……本当に疲れてるの」

帰ってくれと言われたのも初めてだ。優人はしばらく言葉が出なかった。

「……分かったよ。でもさ……来週の休み、確か一緒だったよな、どこか行こう。久しぶりだろ? 最近出かけてなかったし。その話、したかったんだ」

「分かった……後でラインするから」

 

 

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