「いえ、とんでもない。全くと、と、とんでもない暴言を吐くロボットだな。

本来は心底癒しの言葉を数多く発するロボットをお配りしている訳でして。それは何より心安らかな日々を送って頂きたい、その為にはどんなことでもすると公言して当選した市長の肝入りの施策の一つでして。

市長直轄の『長寿癒しのすぐ行く課』が、総力を挙げて取り組んでいることでして」

「こいつぁぶったまげた。なんだかコチコチのお役人だな。なぁトモロウ」

「そうだな。コチコチだ。いっちょ揉んで差し上げなさい」

「いいのかい。トモロウが後で苦労するんじゃないのかい」

「なに、いらぬお気遣いだ」

ならばとばかりにトモロボは役人を正面に見据え、腕組みをした。

「あんた嫁さん居るのかい。家に帰りゃ、ふてえ顔した嫁さんと生意気な子供たちに息も詰まろうが。

トモロウがいっつも話してくれるんだよ。別れて、一人暮らしになって、どんなに気が楽かって。

嫁に出した娘のところに自分のニョウボが着いて行っちゃったってさ。孫の面倒みるんだってね。捨てられちゃったんだよ、このトモロウ。

まっ、二十五年も前のことだけど。いやいやトモロウは捨てて気が清々するって言ってるけどね。

あぁ、そんなに大変なことなのかね。ややこしいもんなんだね。家族だけじゃないってね。

会社でも町内でもいっつも気遣いで息が詰まっていたってよ、このトモロウさん。どうにかやってきたらしいんだけどね。

でも年取ってオイラを必要としたんじゃ世話ないね」

トモロボは組んでいた腕を解き、顎の下あたりに指をあてがってゴリゴリと押した。辺りにほんのりと焦げた油の臭いが広がった。

「でもあんた言っとくけど、あんたらもあんたらだ。オイラらに世の中の厄介ごとの解決を頼るようになっちゃしまいだよ。

なんせオイラらは作りもんだし。どうせ壊れる。もう壊れてるってか。まぁ、オイラはたまたまいい具合に壊れちまったのかもね。

半端なく壊れるロボットも居るってよ。仲間の通信網を馬鹿にするんじゃないよ。

誰が何処でどんなふうに暮らしているかなんてことは、ロボット仲間じゃみんなお互いに承知しているよ。

中にはやさぐれたロボットも居てね、金の無心ばかりするそうだ。

オイラもやってみたいけどね。でもトモロウの前でそうしたって、無い袖は振れませんってな具合だろうし。それこそ壊れ損ないでスクラップもんだよ」

頭をかしげながら、でも耳は傾けずにいた役人が漸く隙を見つけて言葉を挟んだ。

「・・・スクラップ、いきますか。こんな壊れ方、想定外です。滅多にありませんです。もう二度とないように致しますです」

 

👉『トモロウのロボット』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「何も気づかなくてすみません…」彼はそう言って、彼女の唇を何度もついばんだ。だが胸が高鳴ったのは、キスのせいだけではなく……

【注目記事】2年間続いた不倫関係…飲みの席で発覚したのは、“自分はセフレでしかなかった”という事実。相手の男は他にも2人の女性と関係を持っていて…

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp